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緊急着陸のサインを出さなかったパイロットの話

1990年、コロンビアからの飛び立った飛行機が、ニューヨークのJFK国際空港近くで墜落し、73人の乗客が帰らぬ人となった。この痛ましい事故が起きた原因は、飛行機の燃料切れだった。

燃料切れで墜落というのは、航空業界では珍しい。法律によって、目的地まで往復でき、更にしばらくは飛行できるだけの燃料を、飛行機はいつでも積んでいるからだ。

悲劇の引き金になったのは、パイロットが発した信号にある。

信号には、優先着陸、緊急着陸がある。状況によって、余裕があれば優先着陸の要請を、余裕がなければ緊急着陸の要請をすることになっている。

墜落機のパイロットが発したのは、緊急着陸ではなく、優先着陸の要請。天候が悪く、空港の上空が他の飛行機の離着陸で混み合っている中、パイロットは緊急着陸のサインを使わなかったため、着陸の順番が後回しになっていき、のちに対応が手遅れになって、燃料切れで墜落した。

そして、取り返しのつかない悲劇が起きてしまった。

 

いじめやハラスメントだって同じだ。心の燃料が切れる前に、緊急着陸の合図を出さないと、最悪の事態を引き起こす可能性がある。飛行機と同じように、危ない状況になったら他者に合図を出す。緊急時には、「こういうことがある」という程度の合図ではなく、「もう無理だ」という緊急の合図を出す。

そうでないと、対応を後回しにされたり、真剣に対応してもらえず、どんどんと切羽詰まった状況が起きる確率が高くなる。集団で一人の人間を陰湿に攻撃するのは、魂の殺人だ。この「殺人」の犠牲になる前に、緊急着陸の合図を出してほしい。

また、合図を受ける側の人は、いじめやハラスメントの被害者が、我慢に我慢を重ねた後、誰かに助けを求めたら、それは既に優先着陸ではなく、緊急着陸の要請だと捉えてほしい。

しばしば集団の陰湿さの攻撃対象になるのは、普段は内向的な人たち。他人に被害を訴えるには、大きな勇気がいる。その人たちが何らかのSOSを出した時点で、それは優先着陸ではなく、既に緊急着陸の要請だ。そう思って、真剣に向き合ってほしい。

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Yasu
Good Friends Japan CEO. We aspire to offer opportunities of international education especially to unprivileged young adults. ヨーロッパと台湾で仕事をする北海道育ち。大学をアメリカ、大学院をカナダで修了。リベラルアーツ教育、宗教教育修士。
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