アジアの協力会社と話し合いをして、オランダに大学留学を考えている人向けの参考に、専攻ごとのベスト4をリストアップしてみた。
オランダの研究大学は、どこも高等教育、研究のレベルが高い。非英語圏のヨーロッパであれば、「大学で英語で学ぶ」という点に関しては、オランダという国はトップの一つ。学費が安い他の西欧諸国の大学と比較しても、わずかな例外を除き、キャンパス環境を含めた教育環境が比較にならないほど良好。
非英語圏ヨーロッパでは、オランダよりも長い期間の仕事探しビザが発行され、で求人も比較的多いドイツに日本からの留学生が増えてほしいけど、学士課程を英語で開講している専攻が少ないのが難点。ドイツに選択肢がなければ、オランダは第二の選択肢グループの一つになる。
また、オランダの大学を卒業すれば、オランダで1年間の職探しのビザを申請できる。英語圏やドイツよりは短いけど、大学卒業後にそのままオランダに留まれるので、卒業後のインターンを含め、現地で仕事探しがしやすいようになっている。
気になる点は、英語環境の良好さ、キャンパスの設備などを考えると、かなり安い部類になるとは言え、日本の私立大学程度の学費がかかること。学費だけを見ると中東欧やバルト三国ほどは安くない。
オランダの大学を目指す場合、日本の奨学金に加えて、オランダ政府の奨学金もある。競争の激しいJASSOの奨学金などよりも選考に通りやすいことも多いので、オランダ留学を目指す人は、以下のリンク先を必ずチェックしてほしい。
ベストを決めるときに参考にしたもの
以下の大学の専攻ごとのトップは、
- オランダの「研究大学」
- 学士課程を英語で学べる
- 主観的なカリキュラムの好みは評価から除外
という条件をつけてピックアップした。
上記に当てはまらないオランダ語のプログラム、修士課程のプログラム、応用科学大学は、比較対象として除外されていることに注意すること。
また、オランダの研究大学はどこも研究・教育の評価が高く、このようなランキングではなく、カリキュラムで進学先を決めることも多いことにも注意。ランキングの類は参考程度にしておいてほしい。
評価の参考にしたのは以下。
- Keuzegids
- CWTS Leiden Ranking
- QS World University Rankings(QS)
- Academic Ranking of World Universities(ARWU)
- The Times Higher Education World University Rankings (THE)
- U.S. News & World Report Best Global Universities(US News)
- トリプル・アクレディテーションの有無 *ビジネス専攻限定
- 学校単独のビジネススクールの有無 *ビジネス専攻限定
- CSRankings *IT・コンピューター系の専攻限定
- Accreditation Reports
これらを総合し、分析方法、各セクションごとの評価も加味して評価を下している。知名度、合否ラインのハードルの高さは、今回は議論の対象にしなかった。
科目別の評価を確認した上で出していない学士課程の評価は、参考にならない。大事なのは、科目別の教育、研究の両面の評価。
上記の全てを考慮に入れた上でアジアの協力会社と独自に出した、外部評価に基づくオランダの大学の専攻別トップ4は以下。みんなの意見が割れたところは、保持するデータが最も多い韓国の留学会社のCEOの意見を最重視して順位をつけた。
オランダの大学の専攻別トップ4
IT・コンピューターサイエンス系
総合して考えると、英語で学べるプログラムのトップは、デルフト工科大学。デルフト工科大学は、ヨーロッパ全体で見ても、コンピューターサイエンス(CS)を含めた理工学の専攻で最上位の一つ。
デルフト工科大学、近年デルフトに迫る評価を得るようになったアイントホーフェン工科大学は、ヨーロッパの大学に詳しい人なら、アジアでもCS専攻で頻繁に話題に挙がる大学で、オランダでは、この二つの工科大学が突出する。2校とも理系分野に比重を置いていて、専攻分野は理系分野にほぼ特化している。
この二校以外でどこに行くかは、カリキュラムで進学先を決める人も多い。次点のアムステルダム自由大学は、総合大学らしいカリキュラムを組んでいて、工科大学とは少し方向性が異なる。アムステルダム自由大学は一般の人がイメージする「総合大学」で、理系分野以外でも評価が高い。
4番目は、トゥウェンテ大学とフローニンゲン大学のどちらになるかで、意見が二分した。大学の知名度や総合評価などを全て排して考え、サイエンス系のみに特化して考えると、4番目に滑り込むのは、以前に工科大学として定評があったトゥウェンテ大学、という判断。
ただ、この二校には気になるほどの差はない。大学の知名度や国際的な学生街フローニンゲンの環境に惹かれる人は、トゥウェンテ大学よりフローニンゲン大学を選ぶのも選択肢。フローニンゲン大学は、ビジネス専攻でもオランダの上位に入る。
ビジネス・経済系
- エラスムス・ロッテルダム大学
- ティルブルフ大学
- アムステルダム大学
- フローニンゲン大学
ビジネス・経済専攻では、教育、研究の評価はエラスムス・ロッテルダム大学が群を抜いてトップ。エラスムス・ロッテルダム大学は、非英語圏ヨーロッパで、英語で学べるビジネス・経済の学士課程のトップ3に入る大学。集まる学生のアカデミックレベルも高く、オランダでトップレベルでビジネス・経済学を学びたい人は、ここが真っ先に候補に挙がる。
2位のティルブルフ大学は、単独で運営するビジネススクールに加え、アイントホーフェン工科大学と共同で、TIAS School for Business and Societyというビジネススクールも並行して運営する極めて珍しい大学。データサイエンス専攻を含め、アイントホーフェン工科大学と共同で授与するプログラムは、個人的には全ておすすめ。
エラスムス・ロッテルダム大学、ティルブルフ大学の2校は、オランダのビジネス専攻ではダントツなので、ここまでは全員の意見が一致した。ヨーロッパの非英語圏の大学のビジネス・経済専攻で、英語圏のトップ層に食い込める数少ない大学が、この二校。以下のページも参考にしてほしい。
3番目、4番目をどう選ぶかでは、みんなの意見が割れた。どれもほとんど差は見られないけど、今回はビジネス専攻で最も正確なQSを重視して、アムステルダム大学、フローニンゲン大学を優先させた。
ただ、アムステルダム大学、フローニンゲン大学、マーストリヒト大学は、ビジネス専攻ではほぼ差がない。トップ2以外は、ロケーション、細かなカリキュラムの違い、知名度などで選ぶ人が多い。「オランダの大学はどこも無名なので、どうせなら留学生が集まる学生都市で、環境がいいフローニンゲン」「やっぱり国際都市アムステルダム」「マイナーだけどトリプル・アクレディテーションがあるマーストリヒト」など、選び方はそれぞれ。
ビジネス専攻の三位以下は、日本人がよく利用する外部評価を抜き出して、スクリーンショットを貼っておく。実際は指標を見て、何が評価されているのか、どの方向に算出方法が偏っているのか、その指標で測るとどんな特徴の大学・国が有利になるのか、などを細かく分析する必要があることに注意。
QS(左)とTimes Higher Education(右)による、オランダのビジネス・経済専攻ランキング。
世界学術大学ランキングのビジネス・経済専攻ランキング(左)とUS NEWSのビジネス専攻ランキング(右)。
エラスムス・ロッテルダム大学とティルブルフ大学の一位と二位だけは、どこの評価を見ても変わらない。「ビジネス専攻であれば、何を置いても、まずエラスムス・ロッテルダム大学。合格できなかった場合は、ティルブルフ、アムステルダム、フローニンゲンあたり」というのが王道。
政治学・法学
オランダに限らず、政治学や法学となると、多くの国で評価による順位をつけやすい。この分野でアムステルダム大学、ライデン大学、ユトレヒト大学がトップ3なのは全員一致で決まり、4番目も比較的スムーズに決まった。
アムステルダム大学は、政治・法学、メディア系であれば、オランダのトップ。アムステルダム大学の場合、比較的レベルの高くないビジネス専攻と違い、難関の政治、法学専攻、メディア専攻は、入学に高い基準を要求される。この辺りの専攻は、国際的な高校で教育を受けていて、英語で高校レベルの学習をするのに慣れていないと、直接の入学はハードルは高い。
政治、法学専攻、メディア専攻でアムステルダム大学に行く人は、早い段階から準備して、成績と英語力を上げて望んでほしい。
人文科学
- ライデン大学
- アムステルダム大学
- ユトレヒト大学
- フローニンゲン大学
オランダで人文科学全般で有名なのは、ライデン大学。高等教育制度に詳しい人であれば、オランダで人文科学といえば、多くがライデン大学の名前を挙げる。中でも考古学を学ぶなら、ライデン大学はヨーロッパ全体のトップの一つ。考古学に興味があれば、ぜひライデンを目指してほしい。
ライデン大学は、日本語教育でも有名なので、日本語教育の世界に関わる人には、日本でも馴染みのある大学になっている。
ライデンに続くのは、僅差でアムステルダム大学、ユトレヒト大学。この二大学は、理系を除き、社会科学の学問を総合すると研究レベルでトップに立つ評価だけど、それでも人文科学の分野では、メンバーの全員一致ではないにしろ、ライデン大学が教育、研究の評価で順当にトップに立っているという判断。
比較的新しい専攻のビジネスなどと違い、人文科学は、古くて歴史のある大学がその国のトップ層に並ぶことが多い。オランダも例外ではなく、上記はどこも歴史ある古い大学が並んでいる。
生命科学
- ヴァーヘニンゲン大学
- ユトレヒト大学
- フローニンゲン大学
- ラドバウド大学
農業、フードサイエンスで世界のトップの一つが、ヴァーヘニンゲン大学。ヨーロッパ全体を見渡しても、ここまで学習環境が整った大学は稀。生命科学の分野では、オランダの他の大学を引き離して、ここが外部評価のトップに立っている。オランダに限らず、生命科学をヨーロッパで学ぶなら、ヴァーヘニンゲン大学は、まず視野に入れておくべき大学。
ここで初めて名前が出るラドバウド大学も、生命科学の分野で知られている大学。緑の多い地域にキャンパスがあり、自然科学系の学問でも外部評価が高い。
心理学
- アムステルダム大学
- ユトレヒト大学
- フローニンゲン大学
- ティルブルフ大学
心理学専攻のトップは、迷わずアムステルダム大学で確定。これだけは全員一致で決まった。
二位以下は、知名度や総合力を除外すると、評価が相当難しい。三校はほぼ横並び。無理やり順位をつけると、僕個人にとっては上記のようになるという判断。ここは全員の意見は一致していない。
心理学は年度によって順位の変動が大きい。オランダには心理学専攻でトップ8があって、トップにアムステルダム大学があり、第二グループにユトレヒト大学、フローニンゲン大学、ティルブルフ大学、その次のグループにマーストリヒト大学、アムステルダム自由大学、エラスムス・ロッテルダム大学、ラドバウド大学などがあるというのが、ここ数年の動きを見た結論。
オランダの大学全般について
このように、オランダの大学は、専攻ごとにトップの大学が入れ替わる傾向がある。それぞれの大学の強みのある分野が、多くのヨーロッパの国より明確でわかりやすい。
日本の大学をイメージすると、オランダの大学の評価を見誤る。そもそも大学が一極集中にならないこともあり、専攻別の外部評価では世界でもトップ評価を受けていても、大学の総合ランキングの類には、トップに顔を出しにくいという傾向はある。その逆も然り。
俗にいう大学の総合ランキングで、オランダの一つの大学だけが飛び抜けられないのは、主にそれが原因と見ている。高等教育のシステムが優秀で、同じ国に総合ランキングのライバルになる良好な大学が多いため、国内の大学でリソースが分散されてしまっている。
理系で世界のトップ層のデルフト工科大学でも、社会科学・人文科学、医療系の分野で上位ではないため、デルフト工科大学の総合ランキングは下がる。
ビジネス専攻で有名なエラスムス・ロッテルダム大学でも同様に、理系分野の研究に強みがないこともあり、エラスムス・ロッテルダム大学の総合ランキング自体は下がる。
オランダの大学を評価するのに、総合ランキングを見ても意味がない。オランダの大学に留学するときは、大学ごとにどの分野の教育・研究の評価が高いのかを確認すること。
オランダの大学に進学する準備コース
オランダの研究大学に進学するには、日本の高校卒業資格だけでは足りない。Aレベル試験、SAT、国際バカロレアなどと無縁の日本の一般的な高校生が、オランダの大学に進学する一般的な方法の一つが、大学入学前に一年間、オランダで大学準備コースに通う方法。
この制度は無料で利用ができ、利用者はお茶会や食事会にも無料で招待される。偽りの情報発信をする人もいるので、できれば誠実さを重視する人たちだけが集まって、次の年の留学生を助けたり、みんなで交流したりできれば理想的。
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