韓国、マレーシアの協力会社と共同で大学のビジネス(経営)・経済専攻のランキングを作った。
ビジネス専攻の学士課程を英語で学びたいとき、選択肢が多彩な非英語圏ヨーロッパの三強は、フランス、オランダ、スペイン。「大学」という用語を使っているけど、高等教育レベルの本当の意味でのトップを導き出すために、同じ高等教育のグランゼコール、ビジネススクールも含めている。
ビジネス専攻は、大学の名前や総合評価とは関連が薄いケースも多いので、評価するときは必ず専攻別の数字を出す必要があることに注意。人文系や理系のトップ大学の一部は、ビジネス教育自体のレベルは高くないため、たとえ有名大学でもトップグループには入っていない。
このランキングは学士課程に焦点を当て、
- 非英語圏のヨーロッパ
- 学士課程を英語で学べる
という二つの条件をつけている。上記に当てはまらない英国、現地語のプログラム、修士課程のプログラムは除外されていることに注意すること。
ビジネス・経済専攻の評価の下にしたのは以下。これを総合し、合否ラインのハードル、分析方法、各セクションごとの評価、知名度も加味して評価を下している。
- 各国の現地語のランキング(グランゼコール、ビジネススクールのランキングも含む)
- 学部のトリプル・アクレディテーションの有無
- 学校単独のビジネススクールの有無
- QS World University Rankings(QS)
- The Times Higher Education World University Rankings (THE)
- Academic Ranking of World Universities(ARWU)
- U.S. News & World Report Best Global Universities
- Financial Times(FT)
この評価を全て確認した上で出していない学士課程のランキングは、無意味で参考にならない。大学の総合ランキングは国や大学の規模、都市によって有利不利の差が非常に大きいので、まず確認すべきなのは、上記の科目別のランキングとその評価方法。
大学のビジネススクールが単独で存在しているかどうかも、今回は見極めた。他大学と共同で運営している(=単独では運営できない)ものは評価を半分にしている。
このサイトの内容をパクるYouTuberやライターもどきの人は、アクセス稼ぎに間違った情報を流布して留学する人を困らせるのではなく、自分自身でアジアの会社や内情を知っている個人と協働して大学を調べて発信すること。
「この人はすごいなあ、留学する人は助かるなあ」という発信者がいれば、自分にできる方法で応援させていただきます。
非英語圏ヨーロッパの大学のトップ8
トップ3
上記の条件のもとで、ビジネス・経済専攻の複数の外部評価を見ると、以下がトップ3。リンク先は公式ウェブサイトではなく、大学の写真なので、キャンパスの写真も見てほしい。
- ボッコーニ大学(イタリア)
- エラスムス・ロッテルダム大学(オランダ)
- コペンハーゲン・ビジネススクール(デンマーク)
平均的な日本人が思い浮かべる「大学のキャンパス」という点では、総合大学のエラスムス・ロッテルダム大学の環境がイメージに近い。
ボッコーニ大学はミラノ市内にあり、典型的なヨーロッパの都市型キャンパスになる。新しくできたキャンパスは、日本人が設計している。
コペンハーゲン・ビジネススクール は、出願にIELTS 7.0を要求される。入学のハードルは高く、ここで学士号を取った日本人が今までいたのか、少し興味がある。
トップ3と変わりないレベル
学校の特性上、大学ランキングには出てきにくいけど、トップ3と同等レベルの評価なのが、4つの有名ビジネススクール。この中では、エセック・ビジネススクールが、外部評価で他よりやや目立つ。
- エセック・ビジネススクール(フランス)
- ESCP ビジネススクール(フランス)
- エサデ・ビジネススクール(スペイン)
*ラモン・リュイ大学のビジネススクール - IE大学(スペイン)
*IEビジネススクールの学士課程に相当
どれもヨーロッパのアジア人MBA保持者の多くが名前を知っている有名校で、学士課程も英語で学ぶことができる。IEビジネススクールは、以前にランキング上位入りするために過剰な戦略を使って問題視されたことで、僕の中ではイメージダウンをしているけど、教育機関としての評価は、依然として高い。
トップ8
上記トップ7に続くのは、ここ。
- ティルブルフ大学(オランダ)
オランダのビジネス・経済専攻では、エラスムス・ロッテルダム大学に次ぐトップ2。US Newsでビジネス専攻17位、学術レベルを重要視するARWUで同6位という、世界中の大学と比較しても相当な高評価。
ティルブルフ大学に圧倒的に足りないのは、オランダ国外での知名度。オランダにある13の研究大学はどれも非常に評価が高いこともあり、アジアで大学の知名度を気にする人は、あえて他のオランダの研究大学を選ぶ人もいる。
個人的なメモ
大学の学士課程となると、高校生の年代には、総合大学のエラスムス・ロッテルダム大学の知名度がトップ。
日本では、ビジネススクールや中規模専門大学のボッコーニ大学の知名度は今一つ。ただ、実践的なビジネス教育では、教育も就職・インターンも、国の主要なビジネススクールが強い。イタリア、スペイン、ポルトガル、フランスなどの主要な非英語圏ヨーロッパのトップ層は、私立大学、ビジネススクールが並んでいる。
日本人のブログの典型的な間違いは、ヨーロッパの高等教育の事情を何も知らないため、自分の知らないビジネススクールや私立大学を下に見なすこと、そして、プライドの高い人ほど自分が入学したプログラムを誇大広告すること。
現時点で確認できる限り、YouTube、noteでの発信も含め、学士課程に関して言えば(MBAなどは別)、日本語でヨーロッパ留学の公正な情報を提供している人はほとんどいない。
正確性が高いものが多いのは、ドイツ留学している人の一部の発信。ドイツは日本人留学生が多いこともあって、ブログも動画も発信の質が高い。
最近はオランダで良い留学生YouTuberが増えてきたけど、オランダ、ドイツ以外は、不正確なものが大多数。若い世代は特に偽情報に惑わされやすいので、ヨーロッパの高等教育を知らない人の主観的感想を客観的なものと混同しないでほしい。
まとめ
英語で学べる学士課程を対象にすると、英語圏のトップグループに、主要なビジネス・経済専攻のランキングで割って入れる大学は、上記の8校のみ。
日本では大きな知名度がないけど、経済・経営専攻であれば、ヨーロッパの留学に詳しい人で、この辺りの学校を知らない人はいない。どれもビジネス ・経済専攻であれば、世界のトップ50に入る。
2020年8月23日時点の判断では、以上が韓国、マレーシアの協力会社の調査担当も含め、全員一致で合意した、特定の条件下でのビジネス(経営)・経済専攻のトップ8。
次点の第二グループ
トップ8に続くグループ
これに続くのは、入学難易度が意外に低いところもあるフランス、オランダ、スペイン、ポルトガル、ドイツ、オーストリア、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、イタリア、ベルギーなどのビジネス・経済専攻の上位大学。
この辺りまで来ると、世界のトップ60-250前後のレベルで、どこを選ぶかは好みの問題になる。
ヨーロッパのトップにこだわりがない場合、学部レベルでは、奨学金、学費、留学先の国、キャンパス環境、知名度、総合ランキングなどで決める人が多い。イタリア、ベルギー、ポルトガルの公立大学などは、入学難易度が低いケースがあり、内部の学生のアカデミックレベルの平均は高くない。少し大学で楽をしたい人、ハイレベルな教育に拘泥しない人には狙い目。
こちらで確認できるだけでも、トップ8さえ狙えるのに、アムステルダム大学、フローニンゲン大学、アールト大学、ミュンヘン工科大学に入学したケースがある。アジア人学生は特に知名度にこだわる場合が多く、知名度のあるアムステルダム大学、ミュンヘン工科大学あたりは、アジアで人気になりやすい。
入学難易度が高い二つの有名校
大学ランキングと入学難易度は、かなりの割合で一致しない。僕が留学していたブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)、トロント大学(カナダ)を考えても、少なくとも学士課程では、ランキングが下の東大・京大の方が入学難易度は遥かに上。
上記グループの中でも入学が難しいのは、以下の二つの有名校。特にエコール・ポリテクニークは、アムステルダム大学など比較対象にならないレベルの難易度。いわゆるエリート教育を行う学校で、学部教育の評価も非常に高く、集まる学生の学習熱も高い。
- アムステルダム大学(オランダ)
- エコール・ポリテクニーク(フランス)*数学・経済のダブルメジャー
アジアの協力会社の留学生の中でも、他の大学は問題なく合格していても、このエコール・ポリテクニークで撃沈して不合格になってしまう出願者たちがいる。エコール・ポリテクニークは、そもそも協力会社にすら合格者がほとんどいない。
アムステルダム大学は、ビジネス専攻に限って言えば、大学準備コース(ファウンデーションコース)を利用すると、比較的簡単に入学ができる。英国基準の中等教育を行っていない国からの留学生を増やすこともコースの目的なので、日本人は有利になるファウンデーションコースを活用してほしい。アムステルダム大学の最難関の一つであるPhilosophy, Politics, Law and Economics(PPLE)専攻と違い、ビジネス専攻の準備コースを利用すれば入学の難易度は高くない。
【ヨーロッパ英語留学】難関大学の条件付き入学許可証がもらえる公式準備コース(オランダ・スウェーデン留学編)
ビジネス・経済専攻で全体のレベルが高いところ
ビジネス専攻であれば、国全体のレベルが高いのは、誰でも名前が出てくるようなヨーロッパの主要な国。大学の入学難易度が高くなる傾向があるのは、ビジネス・経済で非英語圏ヨーロッパの先頭を行くスペイン、ドイツ、フランス、スイス、オランダ、ドイツの中の有名校。
日本で知られていないのが、フランスの高等教育機関グランゼコール。英語で経営・経済を学ぶのであれば、HEC(英語の学士課程はない)、エセック、ESCPのビジネス専攻トップ3を始め、名門グランゼコールに選択肢がいくつかある。ぜひフランスの高等教育もチェックしていただきたい。
マイナーな国の大学は、英語で開講されるプログラムの人気がない場合も多い。特にビジネス専攻は、入学難易度が低いケースが散見される。教育環境はトップグループに遠く及ばないし、入学する学生のアカデミックレベルも高くないけど、トップのビジネス教育にこだわらなければ、そういった学費の安い西欧の大学も、狙い目といえば狙い目。
英国ランカスター大学のドイツキャンパスで、英語でビジネスを学びたい人へ
中小規模の大学に関して
エコール・ポリテクニーク、ボッコーニ大学、ティルブルフ大学は、「専攻できる分野が限られた中小規模の専門大学」として分類されることもあり、スペイン、フランスのビジネススクールと同様、一般の日本人が目にする大学の総合ランキングには出てきにくい。そもそも評価の対象外になる項目がある。
でも、いずれの学校も、ビジネス・経済専攻では、非英語圏ヨーロッパでは最上位グループ。
現地語のプログラムも入れたランキング
ちなみに「学士号を英語で取る」という条件を外せば、非英語圏ヨーロッパでは下のようになる。単なる一つの指標で、他の指標では順位が大幅に入れ替わる点は留意すること。
スペイン、フランス、スイス、オランダ、ドイツは、全体的にビジネス・経済専攻の評価が高い。国内の大学間の競争が、他とは比較にならないくらいハイレベル。
現地語で学ぶにしても、英語が通じやすい環境に留学したい場合は、こちらの英語能力指数ランキングも参考になる。オランダ、北欧諸国は、非英語圏でも現地の人に英語が通じる割合が高く、比較的、英語で生活がしやすい。
EF EPI 英語能力指数
https://www.efjapan.co.jp/epi/
給付奨学金・教育ローン
国内外の政府奨学金があるので、留学する人はぜひ、それを活用していただきたい。スペイン、ポルトガル、フランス、イタリア、オランダ、ドイツなどのトップスクールに、奨学金で留学しているアジア人は大勢いる。日本人も、積極的にその機会を狙ってほしい。
奨学金は、地方自治体、民間団体(ロータリークラブも含む)の奨学金も必ずチェックすること。あまり知られていないところは、応募者が比較的少なく、競争率が低いケースもある。
トビタテ留学奨学金
https://tobitate.mext.go.jp/
海外留学のための奨学金
http://ryugaku.jasso.go.jp/scholarship/scholarship_guide/
外国政府などの奨学金
http://ryugaku.jasso.go.jp/scholarship/scholarship_foreign/
日本政策金融公庫の教育ローン(貸与型)
https://www.jfc.go.jp/n/study_abroad/index.html
いくつかのリンクを貼っただけで、まだ奨学金の選択肢はある。
推奨する方法
英語で学ぶなら、一番お得なのは、奨学金をとって、トップ8、もしくはスペイン、フランス、オランダ、ドイツあたりの難関校に進学すること。
入学の難易度は上がるけど、最初から学費の安いところを狙うより、遥かによいキャンパス・教育環境で学べるし、学生のバックグラウンドも多様化して、英語圏や旧西側のヨーロッパ諸国からの留学生も増える。
各大学には奨学金制度があり、EU圏外の学生にも奨学金を給付するところも多い。まずは日本で申請する奨学金と並行して、興味がある大学の奨学金制度を学内ウェブサイトから調べること。
例)エラスムス・ロッテルダム大学の学内奨学金
https://www.eur.nl/en/education/practical-matters/financial-matters/scholarships-grants/prospective-students-rotterdam/holland-scholarship-prospective
高校の成績を高くキープしていれば、奨学金の選択肢は増える。良くも悪くも高校の成績が影響する部分も大きいので、現役の高校生はとにかく成績をあげることに注力してほしい。それが将来の可能性を広げることにつながる。
留学する人へ
ヨーロッパ留学の日本語ネット情報は、YouTubeに挙がっているものを筆頭に、間違いや偏りが非常に多いこともあり、ビジネス・経済専攻で大学留学する人には、こちらで無料の大学探し・奨学金探しの手伝いをしている。新しく留学する学生の入学、サイト作り、交流会開催、動画・写真撮影などの手伝いをしていただく条件で、情報は無料で提供する。
ヨーロッパ留学の無料サポートの「ヨーロッパ全域のビジネス・経済学専攻版」と考えているので、連絡は以下のリンクと同様の方法で。
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「あんたのサイトを見て、奨学金付きでエラスムス・ロッテルダム大学に行けたぜ。ビジネス・経済専攻のトップ留学生YouTuberになる俺を見てくれ」
「エコール・ポリテクニークをここで知って、出願したら合格してしまいました…。フランスでエリート教育受けてきます!」
「IELTS7.0でコペンハーゲン・ビジネススクールで奨学金取れたので、デンマークで学士号取ってきます!」
「政府奨学金で留学しているので、自分にできることで未来の留学生を手助けさせてほしい」
というような人がいれば、そういう人も連絡をくれると嬉しい。偽りと見栄に溢れる留学生YouTuberやブロガーも散在する中、未来の留学生が人間として信用できる留学の先輩たちを集めて、次の世代の留学生を助ける小さなコミュニティーを作りたい。軽い気持ちで嘘をついて人を騙すような留学生ではなく、しっかりした人だけを集めたものにしたい。
人生で最重要なのは関わる人。留学する本人も親御さんも信頼できるような留学の先輩が増え、その中から協力してくれる人が出てくると、僕が小躍りして喜びます。
協力してくれる人がいれば、学生たちが集まる会社の交流会や、個別にレストランやカフェで会いましょう。飲食費は会社で出します。