参考記事:Why Shinji Kagawa May Never Fit Into Moyes’ Plans
熱烈なデビューシーズン後、香川真司の状況が少しでも改善した、と考えるのは、賢明ではないだろう。
ウェイン・ルーニーが10番のポジションに君臨している中、デービッド・モイーズは、自分の戦術に最もあった選手の一人とも言われる、この日本代表選手に多大な信頼は示していない。
香川自身、自分のユナイテッドでのキャリアが危機に瀕している、と認めている。この記事では、なぜこの小柄な司令塔が、モイーズのプランに適合しないのかを見ていくことにする。
ドルトムントでの起用方法
ドルトムントでは、香川は攻撃の肝であった。
彼のドイツでの最後のシーズン、31パーセントのボルシア・ドルトムントの攻撃は、香川がいる中盤の真ん中を経由している。
しかし、ユナイテッドでは、モイーズは右サイドからの攻撃を重視している。実際、レッド・デビルズの攻撃の43パーセントは、この右サイドを経由している。今シーズン、香川がプレミア王者でいつもプレーしている左サイドは、主にサイドを変えることに使われているだけだ。
ドルトムントの自由でカウンター重視のサッカーは、香川を輝かせていた。彼のチームメイトたちは技術に富み、ワンツーパスやショートパスでプレーするのを好んでいた。おかげで香川は走り込む先でボールをもらい、最適なポジションを自分で探してプレーすることができていた。
ユナイテッドでは、香川は足下でボールを受けている。しかし、これは彼の慣れたスタイルではない。これでは、ポジション移動の範囲も狭められる。
ユルゲン・クロップの元で、必要な攻撃手段と後方からのディフェンスのカバーを与えられ、ラストパスを供給すること、ストライカー的な役割を担うことに、この24歳は集中できていた。ブンデスリーガでは、彼の身体的な不利は、その技術の高さで補えていたのだ。
ユナイテッドでの合わない戦術
香川は、間違った環境の、間違ったポジションでプレーしている、非常に優れた選手である。
モイーズも気がついているように、彼にとって左サイドは自然なわけではない。得意なわけでもない。
ドルトムントの攻撃は香川を経由していたが、今この日本人は、最大限に利用されていないサイドの選手だ。ドルトムントと違い、ユナイテッドはカウンター主体のチームではない。
今シーズンのリーグにおいて、ユナイテッドの平均なボール保持率は57%(昨シーズンは56.2%)である。香川の加入以来、ユナイテッドはカウンターで2度しかゴールを決めていない。これに対し、香川のドルトムントでの最終年、ドルトムントはカウンターで11度もゴールを決めている。
ユナイテッドは、明らかに香川が慣れているよりもゆっくりのペースでプレーしている。
彼らは、古いタイプのウィングのクロス能力に頼る。相手陣内でボールを保持しつつ、ウィングからディフェンスを崩そうとしている。
モイーズの選手たちは、一試合平均リーグ1位の28のクロスを供給する。香川が左サイドでプレーしているとき、彼のなめらかなパスは、あまり役立つことはない。彼がしなければならないことは、ピンポイントのクロスを供給すること。しかし、この元セレッソ大阪の選手は、クロスを上げることは上手ではない。
そもそもユナイテッドのパススタイルは、あまり洗練されていない。香川は、ほとんどチームメートとワンタッチのパスでサイドを攻め上がれていない。彼はもっと技術があり、聡明なチームメイトを求めている。
忘れてならないのは、香川は十分なサポートを中盤と守備陣から受けていないということだ。彼はいつも深い位置まで下がってボールを受けねばならない。ディフェンスをこじ開けることができても、攻撃をスタートさせることは得意ではないこのアジア人にとって、これはよいことではない。
ルーニーがモイーズに気に入られている理由は、彼が香川よりも優れた10番だからではない。このイングランド代表は、攻撃を始めるために深い位置でボールをもらい、それを外に展開し、ウィングからのクロスをゴールすることを、香川よりもスムーズにできるからだ。
したがって、たとえ香川がストライカーの後ろの位置でプレーしたとしても、彼は必ずしも才能を発揮するとは限らない。なぜなら、彼は今ルーニーが行っていることをやらなければならないからだ。
変えられるのは役割ではなく、プレーヤーだけだ。ユナイテッドの10番の役割は、これからも変わらない。攻撃を組み立て、ウィンガーにボールを提供し、ペナルティエリア内でゴールできる存在であることが求められ続けるであろう。
結論
香川はカーリングカップで引き分けたリバプール戦の後半に、よいプレーを見せた。気がつく人は、それはユナイテッドがリズムよくプレーしていたからだと察しているだろう。リバプール戦は、テンポが早く、激しさとキレが増していた。残念ながら、やっとピッチで攻撃の権利を香川が謳歌したと思ったときに、彼は途中交代させられたが。
もし、モイーズが自分のプランに彼をフィットさせたいのならば、このスコットランド人は、クラブのチーム計画を変える必要がある。172センチの香川は、ヤヤ・トゥーレのような選手とやり合うのに、身体的に見合っていない。しかし、戦術的にしっかりとしたベースがあれば、この身体的不利を容易にカバーできる。
下のビデオを見れば、香川に最適なチームメイトがどんな選手たちかがわかる。それは、ペースが早く、素早い状況判断ができ、流動的なパスワークをしながら動き回れる選手たちだ。
(2012年のドルトムントの攻撃。香川を中心に素晴らしいパス回し)
香川がどれだけ適度な自由を与えられているか、そして、元ドルトムントのスターを主力にチームを作るとき、ユナイテッドが取り入れるべきショートパスのスタイルも見ていただきたい。
ユナイテッドで香川を活かすには、徹底的な見直しが必要になる。その価値は十分にあるが、私にはそれが起きるとは、あまり思えない。
https://kuwayasu.com/archives/10966
ドイツ、スペインでスポーツマネージメントを学ぶ