日本ではあまり有名ではないかもしれないけど、僕はこの絵が大好きだ。
これを描いたのは、19世紀イギリスの画家ジョージ・フレデリック・ワッツ。
視力を失った少女が、星の上に座り、たった一本だけ弦が残ったハープを手にしている絵。
見えるものもなく、真っ暗な闇の中で、ボロボロのハープを手にした少女が、一人ぼっちで耳を傾けているのは、わずかに残った一本の弦の音。
ワッツは、この作品に『希望』という題を付けた。
その目には何も見えなくても、そばにあるものがボロボロになっても、たった一人になっても、この少女が耳を傾け続けたのは、希望という音色。たった一本残った弦で奏でる音色だった。
あまりに大きな困難で行き詰ったとき、僕はたまにこの絵を見る。
ワッツがこの少女を通して聞いた希望の音に、僕自身も耳を傾け、自分には何が残されていて、どんな音を奏でられるのかを、立ち止まってもう一度考えてみる。
そして、自分にできる精一杯のことを、前向きに紡ぎ出すようにしている。
すべてのものが失われ、ボロボロになったあとでも、僕には希望が残されている。前向きに生きる希望が、次のステップを歩む希望が、僕には残されている。
たとえ一人になったとしても、たとえ暗闇の中にいたとしても、たとえ何も周りに残されていなくても、その音色だけには、いつまでも耳を傾けられる自分でいたい。